chronotaxis感想

幻奏譚アラベスクによる演劇『chronotaxis-ORBITAL MANEUVER anotherphase-』を観て参りましたのでその感想を書きたいと思います。

その前にまず基本的な情報を。
『chronotaxis-ORBITAL MANEUVER anotherphase-』はVoltage of Imaginationによるコンセプトアルバム3部作『ORBITAL MANEUVER』を題材にした演劇作品です。
第5回杉並演劇祭の一環として2008年3月20日から23日にかけて東京都杉並区の「遊空間がざびぃ」に於いて上演されました。

ちなみに僕が観覧したのは3月20日の初演です。
なんだかんだで一週間経ってしまいましたorz
結局ひと月半も経ってます。どんだけ放置してんだ・・orz
ノリがイベントレポと似通ってきそうな気がしますが、あくまで感想です(ぉ
再演されることがあるのかは分かりませんが来年あたりに再演される予定もあるそうですが、一応公演は終了していますので割と遠慮無く盛大にネタバレを含む感想になる可能性があります。ご注意下さい。

公演地は東京ですので例によって夜行バスで日帰り遠征でした。しかし観覧予定の公演は19時上演ということで東京着から空き時間ざっと12時間近く。その間何をしていたかと言いますと…記事を読まれた奇特な方は既にご存じかと思いますが、秋葉原の漫画喫茶に引き籠もってM3大阪のレポを書いておりました(;´Д`)
そしてのそのそと西荻窪まで移動。「初日は満席かも?」とのことで、実は兵庫から観に行くなんていう人間はどうやら珍しいらしく、ありがたいことに席を取り置いて頂けるというご厚意を賜っておりましたのですが、「だからといってそれに甘えるばかりで良いものか!というか遅くに入ってきて予約席に収まるなんて俺はいつからそんなに偉くなったんだ。ここは余裕を持って到着し、手間を取らせないくらいの誠意は見せて然るべきではないのか!ていうか道に迷って開演に遅れたりしたら怖いし」と言うことで早めに行動し、意外とあっさり「がざびぃ」を発見。時刻18時15分頃。我ながらなんというチキンっぷり。中を覗いてみるとスーツ姿のお兄さんお姉さんがいらしたので尋ねてみました。「申し訳ありませんがご入場は6時30分からとなっております」デスヨネーorz 実は知ってました。スミマセン。
一旦退散し、そこらをぶらぶらして時間を潰してから、絶対さっきの覚えられてるよぅ(/ω\)とかチキンハートを発動しつつ再度がざびぃへ。ご丁寧な案内を受けつつ二階へ。「お席を用意してございますので」とのことで見てみると、2列目中央辺りの椅子の1つに「(本名)様」と書かれたでっかい紙がw ええとなんか申し訳ございません(ぇ
アンケート用紙や仮パンフレットを見ながら開演を待っておりますと、聴いたことのある曲が・・?待ち時間に他のVOI楽曲をBGMとして流しておられました。にくいサービスだなぁw

【geotaxis】が流れて開演。いきなり暗転…したかと思ったらすぐに舞台に照明がつき、いつの間にか役者が勢揃い。正直いきなり度肝を抜かれました。本当にいつの間にか、いや暗転した瞬間に決まってるわけですが、舞台まで数メートルしか無いというのに人の動く気配も全く感じられなかったのです。もしかすると演劇の世界ではよくやる手法なのかも知れませんが、素人目には手品でも見ているようでした。
大変失礼ながら、正直言うと受付から二階に上がって舞台を見たとき、舞台と客席の規模の小ささに「コレが舞台?」と驚き、もしや勝手に自分が勝手に盛り上がっていただけで現実はこの程度のものだということか、期待は見込み違いだったのかという不安がよぎりました。しかしこれは大変な誤り、実に浅はかな考えだったということを開演直後から思い知らされました。その後も舞台を巧く使った演出が多数見られ、度々驚きと感動を与えられました。それは小さな舞台でも巧く使えばなんていう消極的なものではなく、この舞台でなければ、この舞台だからこそだと思わせられました。
規模と言えばもう一つ。メンバーが少ないのも特徴的だと思うのですが、製作に関わっておられるのは11人で、うち役者さんとしては7人ほどしかいらっしゃらなかったはずです。にも関わらず、chronotaxisは主要な登場人物だけでも9人以上、その他脇役から名もない市民まで含めると軽く20人くらいにはなるんじゃないでしょうか。それらの役ばかりか、時には扉や螺旋階段(!)までその7人で演じきっていたということ自体がまず凄いことであり、またそのことが劇全体に独特の雰囲気を作り出していて引き込まれました。常識的に考えて、役者の数が足りていないということになるのでしょうが、僕自身は一度もそうは感じませんでした。あのメンバー、あの配役でこそであったと思います。付け加えると、同じ役者の別キャラクターならではの笑いも盛り込まれたのが楽しかったです。ああいう物語の外にある笑いは使い所をわきまえればとても面白いと思うので好きですね。
役者の話と演出の話で一つ面白いと思ったことを思い出したので書いておきます。「都市」を運営する政府機関ゾディアックの怪しげな会合のシーンが度々描かれ、会合には執行官長エア様(場合によって他の人)の他に得体の知れない統治者達4名が参加しているわけなんですが、この人達が喋るときに必ず2人以上で台詞を言うんですね。同じ台詞を、息を合わせて。そうすると肉声であるのに、何かフィルターを通したような怪しい響きの声になって会合の怪しさが一層引き立つという具合です。どういうタイプの怪しさかというと、新世紀エヴァンゲリオンのゼーレあたりを想像すればいいのではないでしょうかね。僕エヴァ見たことありませんけど(ォィ
4人の構成は男2人女2人だったように思いますが、2人ペアで喋るのに最大6通りの組み合わせがあるわけで、これがどのペアが喋るかで音色が変わって大変面白かったです。男女ペアだとニュースの匿名インタビューで聴くような感じにも聞こえたり。ゾクゾクしました。

※ここまで1週間後(´・ω・`)ここから1ヶ月半後

メインキャラクターが9人ということで、実は観覧後のアンケートに「お気に入りのキャラクターは誰か」というような質問があったのですが、お世辞抜きにどの人物もそれぞれに魅力的だったのでとても悩んだ記憶があります。
そんなわけで、登場人物について紹介しつつ、それぞれ少しずつですが思ったことなど。

コード(Corde)

主人公です。格好良すぎです。身を削って不治の病に苦しむ患者を治療するお医者様です。つまり善人で頭も良いのでしょう。しかも三角関係の頂点にいるくせに全く気付かないという朴念仁であります。くそー許せn(ry
ガチでこういうキャラって現実にはあんまりいないような気がするので、演じるのが大変難しい気がするんですが、とても自然な演技でした。後半記憶が戻ってきて、パニクッたり激昂したりするギャップも良かったです。スケールとのやりとりで「ふざけるな!」とかかなり燃えましたね。
名前は「和音」に由来するそうで、お人好しで人間大好きなところはまさにその通りですが、同時に誰とも深く関わろうとしないというか、噛み合っていないというか、皮肉なものですね。

セレナ(Selena)

ツンデレですね。
コードくんに気があるくせに恥ずかしさで素直になれなかったり、彼が超弩級朴念仁だったりする所為で進展しないどころかスタートすらしないという状況に日々イライラしつつ、今の状況が壊れやしないかと不安になったりなんていう実に乙女ちっくなキャラクターです。
反面、けっこう現実主義者で常識人であり、比較的特殊な人物の多い物語の中で一番一般的な感覚を有するツッコミ役であるように思いました。配役に関してツッコミを入れたり、一人ノリツッコミを披露するなどは暗くなりがちな話にとても良いアクセントになっていたと思います。
セレナと聞くと個人的にはserenade(小夜曲)を思い浮かべます。これはイタリア語のsereneに由来するのだそうですが、「のどかな」とか「穏やかな」とか・・うーん?(ォィ 綴りからすると月の女神「Selene」の方が正解かも知れません。
後にフィーネが真性の幼なじみキャラであることが発覚するわけですが、リュート(コードの本名)がコードになったときからずっと一緒にいるという意味で、実質的に“コードの”幼なじみ的な位置にいるように思います(どうでも良い
最終的にはカルマくんと良い感じになりそうな流れでしたが、彼も相当ひねくれ者で苦労しそうですね。つーかどいつもこいつも、要らないなら俺にくれt(ry

フィーネ(Fine)

いわゆる「正ヒロイン」ですね。性格的にも間違いないと思います(ぉ
しかし個人的にはヒロイン然とした娘よりもサブヒロインくらいのを好む傾向にありまして、是非セレナたんは俺のよm(ry
ラル爺が作られたのは分かるとして、フィーネは何故なんでしょうね。というか誰の意志で?構図としてはエアがカルマ派でラルがコード派なのでラルなのかなぁ。影が影をというのも疑問の残るところですが。二人が別れる発端に関わる人だし、どっちってもんでもないだろうとも言えますが、やっぱりどうもフィーネはコード贔屓っぽい感じがしますよねぇ。お兄ちゃん涙目。

カルマ(Karma)

一見やる気無いようで義理堅い熱血漢というとても美味しいキャラだと思います。あと腐女子受けが大変良さそうです(マテ
きっと本質的には受けキャラ。ああシスコン属性も良いですね。妹がとっても良い子なので無理もありませんが。
ビジュアル的にもジャケット?と銃が似合ってキまりすぎです。そう言えば執行官としては銃を使ってたのにラストは長剣でしたね。照明に当たってヒヤッと・・はさておき、圧倒的に有利な条件なのに真面目に迎え撃つあたり熱い性格してますよね。負けちゃいましたけど。ていうか何故負けたんでしょうか。長剣装備の執行官(無傷)が短剣装備の医者(手負い)にやられるなんて、つくづく不遇な役回りですね。でもきっと腐女子受けは(ry

ラル(Ral)

ニーt・・失礼。仙人というか賢者というか、割とありがちな爺さんキャラですが個人的に結構お気に入りです。役者さんの演技もとてもそれっぽくて素晴らしい。若者が老人を演じるというのは実に難しいことだと思います。
行き詰まったらヒントをくれるのはこの手のキャラのお約束です。謎めいたヒントと共にボケをかましていくのが愛らしい。「働いたら負けかなと思っている」や「くすぐるぞ」は不覚にも吹きました。
牡羊座の統治者の影ということですが、方舟の行く末を決める大事とはいえ、自分のトコほったらかしてて良いんでしょうか。ああ、働いたら負けですか。なるほど。
ラルの由来はなんだろなと思って少し音楽用語を漁ってみたのですが、それっぽいものとして一つ「rallentando」というのが見つかりました。「だんだんゆるやかに」という意味で、略して「rall.」とも書きます。「世界は、そして緩やかに閉じていく」から取っていたり、というのは僕の妄想です。

エア(Air)

自分に厳しく仕事に厳しく部下に厳しいお姉様で、如何にもクールビューティというのがぴったりなように見えるのですが、実は相当な萌えキャラだと思います。計画的で思慮深い反面、不測の事態に弱いタイプと見ました。ラル爺のくすぐり攻撃に対する動揺っぷりが実に素晴らしい、のですが、個人的にイチオシなのはドルチェからの着替えに時間が掛かって、半ば自棄気味に「無理なんですっ」とか言いつつ遅れて登場したところで、エア様の最萌シーンに違いないと信じて疑わないのですが、2日目以降はどうやら間に合ったようで?初日で良かったなぁと思います(ぉ あと衣装が格好良くてとても素敵だったりで、僕の中ではヒロイン・フィーネを抑えてセレナと上位争いを(聞いてねぇよ
「Air」は音楽関係では「旋律」の意味があるそうなので、これでしょうか。物語内容からすると「空、大気、風」の意も含まれるかも知れませんし、面白いところだと「(主に女性の)気取った態度」という意味もあるそうです。

スケール(Scale)

記憶屋という仕事も特殊だし、口調、立ち振る舞いも独特でとても面白い人物です。人物というより、存在そのものが一つの哲学のようでもあります。実は舞台となる第7階層、天秤座の統治者であるわけですが、彼は天秤そのものであるように思われます。「どちらでも良いんだけどね」という中立的な立場、全体を生かすために淘汰しなければならないという統治方法、まさに彼自身が天秤たろうとしているようです。物語の基本も、スケールの両天秤にコードとカルマが、或いは様々な哲学的な問いの是か非かが乗っているように思えます。問題提起者であるスケールは或る意味主人公達より重要な位置にいるのではないでしょうか。しかし彼自身は最後で一方を切り捨ててもう一方を救うことに否定的と思える発言をしているあたりが皮肉というか、人間らしい一面のようで面白いなと思ったり。
とかまぁ難しい話は良いんです。そんな難しく考えなくても面白い人です。終始掴み所のない感じで、前半の流れだと脇役っぽいのにいつの間にか全てを知る重要人物ということが分かって、政府機関制圧に参戦したり、ラスボスだったりと大興奮です。カルマくんとは対照的に美味しいところを持って行きますね。言うなればカルマくんはラストダンジョン(塔)でラスボス前に戦う前座的なライバルに収まってますしね。なんだか可哀想になってきた・・
というか後半の流れはRPGに例えると妙にしっくり来るな・・
「Scale」は音楽関連では「音階」という意味で使われるそうですが、人物と重ねると「物差し、尺度」という意味が強い気がしますね。はかる者ということで。掴み所のない態度は「scherzando」(スケルツァンド/おどけて)にも通じているような気もするのですが、これは考え過ぎかな。

こうして並べてみると、意外と典型的なキャラクターばかりなんですよね。
朴念仁の主人公、元々側にいるツンデレヒロイン、突然現れたpureな御嬢様系ヒロイン、ニヒルなライバル、真相を知る謎の男、仙人じみた老人、クールなお姉さん、病弱な御嬢様などなど。それ故にとっつきやすく、しかし飽きさせない内容でとても良かったと思います。特に後者は役者の熱の入った演技の賜物でしょう。

えー、だいぶ好き放題書いてきて、我ながら読み返すのも恐ろしいわけですが、正直纏めている余裕がないのでその他思ったことなどをつらつらと。

最後の最後で立て続けに【風タチヌ】、【relative anemotaxis】、【amrita】という流れは巧い演出でした。【風タチヌ】のしっとりした感じ、そして勢いのある【relative anemotaxis】で大団円というのがシーンにとてもマッチしていて素晴らしかったと思います。絶妙なタイミングでの「物言わぬ」で不覚にもウルっと。【amrita】はメインテーマ的なものでしょうか。僕は「いつまでも続く雨」は地球の話と認識していましたが、今作品では方舟の黒い雨のことのように思われます。

ところで、アンケートで「この演劇のテーマは何か」という質問がありまして、改めて台本を読ませて頂いてから新たに浮かんだことが一つ。杉並演劇祭のテーマは「命の大切さ」だそうですが、対してこの作品は「命を秤にかけることは出来るか」「命より大切なものはあるか」「あるとすればそれは何か」を考えさせてくれたと思います。極端に言えば命が貴いものであることは皆知っています。納得しているかはともかく。しかしこちらは実に難しい問題です。実に。しかし、「命の大切さ」を掲げた演劇祭の一部として「じゃあ命ってどのくらい大切なのよ?地球より重いって本当に?」なんて問題提起してしまう八千草さんは相当肝が据わっているなぁと思います。

僕としては全く問題無いんですが、べた褒めというのも胡散臭く見えてきそうなので僭越ながら少しだけマイナス面も。
盛り上がってくるところなのであのくらいでもいいのかなと思いつつ、コードVSカルマ決闘シーンの辺り以降のBGMがちょっと大きすぎたように思います。初日だけだった可能性もありますが。
それと最後の最後、エピローグ的な部分でそれぞれの状況がちょっと分かりにくかったかなと思います。いつの話で、誰が何処にいて、あれからどうなって今どうだみたいな。説明臭くなると冷めてしまうし、背景等で出来る演出には限りがあるしでかなり難しいとは思うのですが、最後話がどう収まったのかが分かりにくいところがあると安心していいのかどうかもやもやするというか(苦笑
それにしても素晴らしい舞台でした。既に次回公演が9月11日に予定され、さらに『chronotaxis』に絡む話も『chronotaxis』の再演と同時に企画されているとのことで、今後も大変楽しみです。次はなるべく翌日まで予定を空けてゆっくりお話しする時間も取りたいところですね。
そうそう、当日は慌ただしい帰宅になってしまいましたが、一つ面白いことがありました。入るときは結構強く降っていた雨が、帰るときにはすっかり止んでいたのです。めでたしめでたしということでしょうか(笑

後日談的な

僕が行ったのが初日の公演なんですよね。その日は結構席が埋まっていて、取り置き感謝という感じだったのですが、なんと翌日は4人しかいなかったそうです。4人かぁ・・凄い差だなぁ・・もし行けたなら2日目も行きたかっ・・あ?
http://aciblog.exblog.jp/8218127/
(;゚д゚)
ちょw4人ってww
いやー惜しいことをしたような気もしますが、緊張で観覧どころではなくなりそうな気もしてやっぱり初日だけで良かったかもと思ったりも(笑

さて、取り敢えず書き終わったと言うことにしておきたいと思います。「今は時間が無いので帰ってblogにでも感想上げますね」なんて言っておきながらこの体たらく。本当に申し訳ありません。ああ消えてしまいたいorz ていうかあらべすぶろぐが5月10日に消滅予定だそうです。あと3日しかねぇえええ(;´Д`)
観覧1週間後に途中まで書いてあったのですが、その後色々あって5月まで引っ張ってしまい、GW最終日の夜に追記をしているという状態です。ただでさえ乱文なのに、こうも離れると余計ちぐはぐな感じになって大変良くないので、本来なら全部書き直すべきなのですが、そうすると本気で書き上がらない気がしてきましたので、大変お見苦しいのを承知で敢えて修正等は行わず、ただ続きを書くだけという形にさせていただきました。スミマセン。
本当はもっと書きたいことも沢山あったはずなのですが、思い出しながら加筆していくと本格的に何言ってるのか分からなくなりそうなのでこのくらいにしておきます。というか既に十分(無駄に)長いですね!(ぁぁぁ
もし最初からここまで読んで下さった方がいらっしゃいましたらありがとうございます。というかすみません。お叱りはコメント欄からどうぞ(´・ω・`)ノ

M3のリストは今日か明日にorz

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